イン・トーキョー

午後、東京に移動。

名古屋駅の新幹線ホームの立ち食いきしめんで昼食。

昼時の新幹線ホーム。下り側(大阪方面)はひと気が少なくてよい。だから立ち食いきしめんを食べるとき、ぼくはもっぱら下りホームにある立ち食い店にはいる。

今日も、食べ始めは店の中の客はぼく一人だった。が、突然団体客がやってきてひと騒動だった。やってきたのは中国の団体。日本語がわからないときた。店のおばちゃんが食券を買えというのだが、判らない。甲高い声で店の中はてんやわんや。

ぼくのところにやってきて、ぼくの食べているものを珍しそうに眺めるオヤジまで現れた。ぶしつけもはなはだしいが、我慢。そのうち諦めたのか、すっと店からいなくなった。と、間髪をおかず、今度は正当日本人のオヤジの団体。

総勢10人くらい。どどどっとやってきて、みなで同じものを注文。今度は日本人だから食券を買って順番待ちをするのはいいが、どうもなにかおかしな雰囲気。物怖じしない雰囲気というか、我が物顔な雰囲気というか。ぼくは、そんなオヤジに肩つきつけられそうな感じに挟まれて、早く食べて出て行け、の無言の圧力。

そそくさと店からでた。なんだか食べた気のしない昼食となり、ぐったり疲れた。

新幹線の中では、いつものHDDウォークマンで『マイルス・イン・トーキョー』を聞いた。

このアルバムは1964年。東京の厚生年金会館でのライブ模様を伝えるもの。演目は、イフ・アイ・ワラ・ベル、マイ・ファニー・バレンタイン、ソー・ホワット、ウォーキン、オール・オブ・ユーの五曲。いずれも当時のマイルスの定番中の定番。

とくにマイ・ファニー・バレンタインの出だしが良い。マイルスのトランペット独奏の音が実に朗々と響く。この音はイアホンで聞いてはいけない。でかいスピーカーでガツンと聞きたい音だ。と、思うが今のぼくの部屋にはスピーカーなど無く、ましてオーディオなどと呼べるものも無い。いずれまた自作でスピーカーなど作って、じっくり自分の音を探したいものだ。

ぼくが自作のスピーカーをはじめて作ったのは学生の時。フォステクス10センチフルレンジが一つのバスレフだった。はじめてつくった割には良い音を出し、本棚に組み込んでがっちり回りを固めたら、さらに良い低音が出るようになった。

マイルスのアガルタをガンガン鳴らした。住んでいたアパートの住人から文句が出たけど。あの音は好きだった。いまでもぼくの中の基準音になっている。パーカッションが頭の後ろから聞こえてくるくらい、音の定位のはっきりしたスピーカーだった。JBLに匹敵すると当時は思っていた。

スピーカーといえば、当時ぼくがよく行ったジャズ喫茶は、タンノイ・オートグラフとかJBLのボイス・オブ・テアトルというような、どでかいスピーカーが主流だった。人の声が聞こえないくらいでかい音で鳴らしていたが、そこでマイルスやコルトレーンが実際に演奏しているかのように思えた。いまでもそんな音を聞かせてくれる場所はあるのだろうか。あれば行ってみたい。

などと昔のことを考えていたら、いつものトーキョーに着いた。

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街の角で

昨日、東京の家に戻ったのは訳がある。

3連休である。その3連休の3日目(すなわち明日)、柔道フランス国際大会の中継がテレビ東京で放送されるのだ。

ところがなんと、この試合、愛知県では放送されない。なんてこった。

愛知県ではテレビ愛知という局が、テレビ東京系列である。しかしながら明日の柔道は放送しない。なぜだか理由はわからない。

井上康生選手が出場する大会なのにだ。もちろん愛知県には無関係だから責任は無い。無いとは言え放送しないなんて。

それで、ぼくはこれは東京に戻り、わが妻かおりさんとテレビの前に陣取るしかないと考えたわけだ。

そうして迎えた今日の朝、一本の電話。鳴った。取った。葬式ができた。しかたあるまい。で、今日また夕方の新幹線で愛知県に戻ってきた。

明日の試合結果、判ったら教えてください。

さて、連休の真ん中の夕方なのに新幹線は混雑。受験生とみえる若者が多かった。

ぼくはマイルスの「オン・ザ・コーナー」を聞きながらウトウト。

オン・ザ・コーナーは、エレクトリックマイルス時代、ビッチェズ・ブルーからアガルタへと突っ走る途中に出たアルバム。リズムセクションが複雑なリズムを延々と続ける中で、ほんの一吹き二吹き、マイルスがペットを鳴らす、ような曲。ずっと聞いていると、確かに街の角にずっと立っていて、都会の喧噪に揉まれているような気になる。

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娼婦たちの憂鬱

新幹線に乗っていてすこぶる気持ちのよい場所がある。

新横浜をすぎていよいよ東京が近づいてくる。

多摩川にさしかかる手前で横須賀線が並走しはじめると、新幹線は次第にスピードを落とし、さながら着陸前の飛行機のようなゆったりとした動きに変わる。

この区間あたりから新幹線の線路は大きく右に左に蛇行しはじめる。

ぼくがすきなのはこのあたりからだ。

窓から見る景色は、実に東京だ。大地の凹凸をそのままに、家がびっしり並ぶ。大きなビルが無く、見晴らしがとても良い。新幹線は高架を走っているため、高いところから景色を眺めることになるので遠くまで見通すことができる。まさに飛行機に乗っているような感覚だ。

そして、新幹線は品川区に入る。

東急大井町線を真下にみて交差し、進行方向右手にソニーを見、そして三共研究所の四角い建物が見え始めると、新幹線は大きく右に傾き、線路のカーブに従って急旋回していく。

右旋回が終わり、左手に山手線が現れるとこんどは山手線に沿って左に急旋回していく。

この間、ほんの数十秒だが、新幹線は右、左と大きく揺れ、車体そのものが浮遊間に包まれる。ゆったりとした動きは命あるもののようだ。

大きなザトウクジラが海に潜航する直前に体をくねらせるような、空飛ぶ龍が獲物を狙って方向を定めようとしているかのような。

ともあれ、ぼくは実に気に入っている。とても気持ちがいい場所なのだ。

今日もウォークマンを聞きながらこの場所に来た。ちょうどマイルスの「ビッチェズブルー」を聞いていた。その音がこの風景にとてもよく合うことが判った。

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マイルスを欲す

今週も名古屋、東京を行ったり来たり。そうなると自然、新幹線の車内で過ごす時間が増える。

最近は、去年会社の親睦会で抽選にあたったHDDウォークマンを聴いて過ごしています。現在記憶させているのは全部マイルス・デイビスの曲ばかり。60タイトルのCDから約550曲。

このウォークマンの良いのは、全曲をアルファベット順にソートして再生できること。だからアルファベット順に並べかえてみると同じ曲が何曲ぐらい登録してあるのかが判る。

HDDウォークマン登録数多いマイルスの曲は次の通りでした。

1位、Walkin’ これは15曲。
2位、So What 12曲
3位、The Theme 9曲
4位、If I Were A Bell 8曲
以下7曲が、No Blues、All of You、Autumn Leavesと続き、6曲になると、Milestones、Round Midnight、Two Bass Hitなどが出てきます。

Walkin’だけ15曲続けて聞いても2時間以上かかり、新幹線の中では、オリジナルレコーディングバージョン(これが一番緩いテンポ)や、ライブバージョン(どんどんリズムが早くなる)を聞き比べることができ、そこそこ飽きません。そのうち、今聞いているのが、どの当たりの年代のバージョンなのか、ほとんど訳がわからなくなってしまいますが。

ぼくはこのWalkin’など50年代の曲よりも、70年代以降のエレクトリックマイルスの方が好きなので、Agharta(アガルタ)とかGetUpWithIt(ゲットアップウィズイット)方面に偏向的嗜好性を持っています。これらの曲はリズムセクションの音圧で頭の中が真っ白になってしまいますので、外界から意識を遮断するのにもってこいなのです。

ピコピコ携帯を鳴らしたり、やたら咳き込んだり、イビキをかいたりするはた迷惑な人々の騒音から隔絶され、狭い新幹線の空間が安寧の境地へと変わっていくのであります。一旦隔絶されれば、こっちのモノです。新幹線のかすかな振動が心地よいバイブレーションとなって、ココロもカラダも癒されていきます。

最近は、そんなことしながら新幹線を楽しんでいるともうしますか、旅の時間を費やしているわけでありました。

さて、今日は午後、東京から名古屋へ移動。いつものようにお昼ご飯を、わが妻かおりさんと東京駅で食べ、かおりさんとはここで、しばしのお別れであります。で、また今週の金曜日には東京に戻ってくる私でありました。さあて、また新幹線の中でマイルスだ。

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『ブラックホーク』で

▼ついにダウン。朝、頭痛がひどく、また身体とくに下半身がだるいようなチカラが入らない状態。昨日の夕方からなんとなく来る予感はしていた。これから先のことを考えると、いまのうちになんとかしないと。今日はもう会社を休むしかない、と判断。布団から抜け出すのをやめた。昼までじっとしていた。

▼外は真冬のよう。雪が降っている。ストーブを灯し、薬缶をチンチンさせて部屋を暖め、薬を飲んでひたすらじっとしていた。動物が身体を癒すような感じで。午後ようやく身体が楽になり、起きた。ちょっとご飯を食べたら、まことに現金なもので、ますます楽になった。

▼久しぶりにマイルスを聴きたくなった。で、『コンプリート・ブラックホーク』。



▼およそ4時間にわたるライブだ。60年代マイルスの代表曲がほぼ聞ける。しかもライブ。クラブの雰囲気が好ましく聞こえる。ひさしぶりにノンビリした。4ビートのリズムが心地良いことをあらためて認識した。身体がちょっとめげているときにはこういうリズムがいいんですね。

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アガルタ〜楽園への飛翔


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▼人間ドッグの受検のため一昨日の夜(金曜日)東京に戻った。例によってPDAにはメモリー満杯にマイルスが詰め込んである。新幹線の席にすわって今夜は『アガルタ』を聴いていく。アルバム2枚分(CDは4枚)の時間は100分。ちょうど名古屋から東京までの時間に相当する。

▼アガルタを初めて聴いたのは学生のとき。手作りのスピーカーの限界までボリュームをあげて下宿の人々から顰蹙を買いながら馬鹿でかい音を鳴らした。アルバムの解説書には「このレコードは住宅事情の許すかぎり、ボリュームを上げて、お聴き下さい。」と書かれてあるのだ。

▼レコードに針を落とすなりビートのあるベースとドラムスが一気に聴くもののテンションを上げまくっていく。そのままリズムの虜になっていくのである。そしてプレリュード1、2と終わり、麗しのマイシャに入ったとたん、マイルスの弾く電子オルガンが合図となってボサノバのリズムに変わる。その段階でぼくはほとんど昇天的エクスタシーを感じてしまうのである。

▼新幹線の騒音も感じず、ひたすらアガルタの世界に没頭。やはり麗しのマイシャで昇天。それまでの緊張と緊迫から解き放たれる安堵感、開放感、喜び。こういった気持ちにしてくれるマイルスはやはりなんといっても『いい』。今日もまたアガルタを聴きながら、これを書いてます。

▼ところで、気になる(でしょ?)人間ドッグでありますが、単身赴任2年を経過したぼくでありますが、どういうわけかすべての項目が改善され、中性脂肪、コレステロールともに平常値。そして体重もみごとに下降傾向に入り、昨年と比較し約2キロ程度減ってきております。視力も若干回復しておりました。これもひとえに精進の結果と受け止め、これを維持していこうと思っております。

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