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赤頭巾ちゃん気をつけて

庄司薫の小説である。彼はこれで芥川賞をとった。

ぼくがこの小説を読んだのはたぶん高1くらいのときだ。中央公論社の単行本(当時の中央公論社の単行本はどれもビニルカバーがしてある良い本だった)の帯には、三島由紀夫がコメントを載せていたような気がする。確か、新しい口語体の新感覚の小説だとかなんとか。

昭和軽薄体と呼ばれるエッセイや小説は、椎名誠や嵐山光三郎によって定着されたが、それよりずっと前に、薫君という性別不詳(設定は男だ)な主人公の語る一人称の物語はとても新鮮だったと思う。

岡田裕介主演で映画化され、ぼくは町の映画館でこれを見た。薫君が怪我をして病院で手当てをするのだが、そのときに女医さんの胸元が見えてしまい、なんて場面で軽く興奮した。

幼馴染の由美ちゃんを演じていたのは、小説のイメージとはちょっと違うスレンダーな女優で、ぼくは、その後しばらくしてNHKでドラマ化した際に由美を演じた仁科明子の方が、由美のイメージに合っていると思ったものだ。

その後、今でも、ぼくの中の由美は仁科明子と決まっている。

「赤頭巾ちゃん気をつけて」のDVDを見つけたので、懐かしくてすぐ購入した。



スレンダーな女優は、森和代という人だった。

映画最後の場面で、赤頭巾ちゃんが「あなたも気をつけて」と応えて雑踏に消えていき、佐良直美の歌う主題歌が流れる場面が記憶に強く残っていて、もう一度、この映画を見たいと思っていた。

で、見た。

うっひゃー。こんなに疲れる映画だったんだ。が、感想。

主人公は東大法学部へ行くことを運命づけられている日比谷高校生。しかも、シェイクスピアとゲーテを愛しているときたもんだ。同級生は髪を七三に分け、小説同人誌を発行しているときた。悩みは多く、人生とはなにか、自分はどう生きたらよいかと涙を流す。よくこれだけ訳の判らない(こ難しいこと)を話すもんだと感心する。君らはホントに高校生か。

最後に主人公の薫君が由美に「今日はとてもいいことがあったんだ」と話し、なにかふっきれた様子でエンディングとなる。こっちはなんだか良く判らないので、さながら煙に巻かれた気分になる。時が経ち、ぼくにはもうあのデリカシーを感じられなくなっているのだろう。原作小説もよく考えると、その当時の若者のデリカシーが詰まっていて、それが良かった。

東京銀座でロケをしており、その時代の街の様子が興味深い。まず目立つのが、茶髪がいないこと。茶髪のいない景色は外国みたいだ。そしてまた車が懐かしい。セドリックやパブリカ、スバル360なども走っている。

女医さんのところで治療するシーンは記憶よりずっとエロティックだった。ありゃ、確かに興奮する。

ともあれ、再び見直してみると懐かしさと目新しさがあって、なかなか面白かった。今、この映画をリバイバル上映したら、かえって新しいものを感じるかもしれない。それくらい古い。まだ38年前なのに。

こんなモノを残して庄司薫は「逃げて」行ったんだなあ、と思った。庄司薫の著書に関する話題はまたいつか書くかもしれない。

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コメント

>くーぺさん
ですよね、あの頃の若者はきっともっと大人だった。といってもぼくらの兄貴くらいの世代。
おそらく世の中全体がもっと真面目できっちりしていたのだと思います。

投稿: mIKE | 2007.02.26 21:49

懐かしいですね。私も高校生の時、何度も4部作を読みました。
映画の方は、大学生の頃、古本屋でパンフレットを見つけて買った以外、見たことはありません。由美ちゃんは仁科明子だったんですか。仁科明子なら合いそうな気がします。
あの頃の映画を見ると、若者は妙に理屈っぽくて大人びているように感じます。今の自分よりもよっぽど大人だったりして...(^^;)

投稿: くーぺきゃんぱー | 2007.02.24 13:31

>わたべさん
白鳥ですね。4部作の中では一番よかったと思います。由美ちゃんが『死』を感じておかしくなってしまう、ような話だったような気がする。白木連の花がイメージとして残っています。エッセイで「狼」もありましたね。

投稿: mIKE | 2007.02.17 08:28

懐かしい本です。
映画は見ていませんが、本は何度も読みましたねぇ。
赤、黒、白、青と何度も読みましたが、白が多かったですかね。(^^)

投稿: わたべ | 2007.02.16 11:29

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