コーチンの生玉子
▼NHK大河ドラマ「功名が辻」が始まったというのに、一向に盛り上がってこない愛知県岩倉市である。山内一豊を郷土の英雄としているのに、なんだか非常に冷ややかであるなあ、というのが今日のぼくの印象である。人通りの少ない町角の電柱に、功名が辻の宣伝旗が寂しげに揺れていたりする。
▼もっともロケを誘致しようにも、昔の町の面影など探したって出てこないくらい、秩序無く現代化してしまった地方都市だ。本来なら残しておくべきだった岩倉城の跡地すら見いだせない。舗装された道路の脇に石碑だけが残されているだけで、観光客すら訪れない。これでは山内一豊公も浮かばれないだろう。
▼歴史ある場所でありながら現代人がその価値を守ってこず、いつしかカタチも失われ、かつての英雄や物語の記憶すらも忘れられてしまったような話はたくさんあるのだろう。ところがだ。実はここいらの人々が「これは俺たちの誇りだからね、あんまり誇らしくいえないけど」と、ちょっと寂しく語り出すものがまだある。それが名古屋コーチンだ。
▼名古屋コーチンという鶏をご存知だろうか。コケコッコーのニワトリの一種で、地鶏ブームに乗って今、結構人気がある。その名古屋コーチン。実は発祥はここ、愛知県岩倉市なのである。本当なら岩倉コーチンと呼ぶべき品種であるのに、それをしなかった。だから、世の中みんな名古屋で生まれたものだと誤解している。
▼戦後、岩倉にたくさんあった名古屋コーチンの養鶏場。いまほどブームでないころに倒産してしまった。あるいは簡単に飼育できるブロイラーに鞍替えしてしまった。優良品種であるにも関わらず、手間がかかって儲からないからと、転向してしまったのだ。今は地鶏ブームがやってきて、名古屋コーチンが高値でやりとりされている。唯一一軒の養鶏場がその伝統を守っている。
▼だからかどうか判りませんが、なにかのイベントがあると、密やかにここの養鶏家やその肉を扱う料亭の人達で作っているコーチン組合が、出店をつくってコーチンの焼き鳥などをサービスしたりしている。でも、どうみても、これを郷土の宝にしようという意気込みは感じられない。周りの人々も冷ややかだ。なんだかぼくにはとてももったいないことと感じられる。
▼その価値故に少し高価であっても良いようなコーチンの生玉子が、割と無造作に駅前で売られていたりする。町のおじさん達が露天で野菜やなにかと一緒にテーブルに並べているのである。売れ残りもある。6個で300円。安い。絶対にお買い得。だからぼくは買うのですが。なんか割り切れないものを感じてます。買う人達も売る人達も、もっとしっかり郷土の誇りを感じたらどうでしょう。そしてこれをもっと良い事業にしていってもらいたいものなんですが。

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