加川良の夜
▼名古屋大須のちょっと裏にはいったところにある喫茶店で、加川良のライブがありました。HOPEさんにお誘いを受けて一緒にいってきました。
▼加川良というのは、日本のフォークソングシーンにあって、独特な位置にいるシンガーと思っています。デビューは高田渡や高石ともやよりやや遅れてはいるものの、中津川フォークジャンボリーにも出演しており、70年代初期において一斉にいろいろなシンガーが花開く頃に独自の世界を築きあげたひとであると思います。「下宿屋」という歌がとてもヒットしましたが、四畳半一間の下宿屋でつぶやくように内面を吐露する私小説的リアリズムな歌詞と厭世観は「四畳半フォーク」などと呼ばれて、次第に変化する時代の波に飲み込まれていきます。
▼ぼくが加川良の歌を聞いたのは、70年から72、3年頃。当時ぼくたちの間でやたら流行っていた深夜放送、パックインミュージックとかオールナイトニッポンだったように記憶しています。よく流れていました。高田渡や岩井宏のカントリー系の歌とはちょっと異質で、どこか演歌のような節回しを感じたり、でも、そこからくるメッセージはやっぱりフォークかなあ、などと思っていました。
▼ぼくはやがて大学生となり、ぼくの興味はどんどん新しい音楽、はっぴぃえんどや荒井由美、吉田美奈子に流れていってしまいます。新しい音楽の潮流でした。そういう中で当時とてもたくさんいたフォークシンガー達はどこかに行ってしまいました。高田渡がしぶとく再びぼくらの前に現れたのは90年代後半です。加川良のことも忘れてしまいました。でも、なにかのきっかけで突然、「教訓1」のフレーズが頭に浮かんだりしてくることがありました。
▼さて、そんなこんなでおよそ30年ぶり、加川良の歌をライブで聴いたわけです。変わってません。同じです。でも30年経っているんです。声も詩も同じです。思いも同じかもしれません。このひと若いなと思いました。姿も姿勢も。これってすごいことだなあ、とおよそ2時間半。ぼくたちは彼の姿に釘付けだったと思います。人生の断片をちょっと切って、自分に向き合う歌は健在でした。ほとんど同じコード展開の曲が多いのも彼独自の世界を形成しています。これは個性ですね。曲間のMCが面白くて飽きません。彼自身とても楽しそうにしてました。

▼立ち見を含めて観客は50人くらいだったでしょうか。店内の片隅にしつらえてあるステージはこじんまりとして明るく、ギターの音も良く、年末になにかとても得した気持ちになりました。HOPEさん、ありがとうございました。
その後、矢場町の味仙でちょっと紹興酒。余韻に浸りました。
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コメント
まったく同感です。気持ちよく年齢を重ねていきたいものですね。
投稿: mIKE | 2005.12.28 19:54
久々に聞いた良さんは、相変わらずの加川節。 この声にはまって20数年、年に一度のお楽しみ。 多分、これからもそれは彼が歌う限り永遠に・・・僕のお楽しみ(~_~;)
こんな親父になりたいもので(*^^)v
投稿: HOPE | 2005.12.28 13:01